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免疫細胞はどこで作られ、どこで働くかをわかりやすく解説

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はてな
私たちが病気にならないために重要な働きをしているのが免疫系です。
ではこの免疫系の主役である免疫細胞がどこで生まれ、どこで病原体と戦っているのか皆さんはご存知でしょうか?
答えは「骨髄や胸腺で生まれ、リンパ系と脾臓で戦っている」です。
この記事では、

をお話ししたいと思います。

免疫細胞は何からできるの?

作る
そもそも免疫細胞は何からできているのでしょうか?
血液の中には、
酸素を運ぶ「赤血球」
主に免疫系を担当する「白血球」
傷口をふさぐ「血小板」
の3つの血液細胞があり、血液細胞の内、免疫系を担当する細胞たちを免疫細胞といいます。
血液細胞は、もともと造血幹細胞という一種類の細胞から分化して作られます。(分化とは細胞の性質が変化することです)
造血幹細胞はなんにでもなれる万能性を持った細胞なのです。

免疫細胞の工場「骨髄」と「胸腺」

工場
免疫細胞を含む血液細胞の最初の姿である造血幹細胞は、骨の内部にある骨髄という場所に多く存在します。
このため、基本的にはこの骨髄が白血球などの免疫細胞を含む血液細胞の生まれる場所、つまり工場となります。
T細胞(Tリンパ球)を除く免疫細胞(好酸球などの顆粒球とB細胞、単球)はこの骨髄で作られ、体内に送り出されます。
(ちなみに、胎児期には造血幹細胞は肝臓に存在していて、胎児の血液細胞は肝臓で作られます)
対してT細胞だけは、その分化の途中で胸腺という臓器に移動し、そこで完成します。
では、骨髄や胸腺ではどのようにして免疫細胞が作られているのか見てみましょう?

用語解説「免疫細胞」
免疫細胞には、顆粒球,単球,B細胞,T細胞などがあり、これらの免疫細胞が協力し合って、免疫系を維持しています。
顆粒球は好酸球,好中球,好塩基球に、単球はマクロファージ,樹状細胞にそれぞれ分類することができます。
彼らの働きを知りたい方は、「免疫細胞の4つの働きを紹介します」も併せてご覧ください。

骨髄の中で何が起きているか?

骨の図

骨髄

骨の断面を見てみると、外側の固い層の内側にスポンジ状の部分が見られます。この部分が骨髄です。(図の黄色い部分)
骨髄で作られる免疫細胞のうち、特殊な過程を必要とするB細胞の分化の説明はまたの機会にするとして、顆粒球や単球の分化の過程を見ながら、骨髄の中で何が起こっているかを見ていきましょう。
ちなみに、ここでは免疫細胞についてお話ししますが、これら以外の血液細胞(赤血球や血小板)の作られる過程はほとんど同じです。
前にも書いた通り、免疫細胞を含むどの血液細胞の分化も造血幹細胞から始まります。
骨髄の中で、造血幹細胞は細胞分裂により自分と全く同じコピーを救ることができます。これを「自己複製」といいます。
自己複製によりできた造血幹細胞の一方は、そのまま造血幹細胞として骨髄に残ることで、造血幹細胞の数は保たれています。
免疫細胞となることとなったもう一方の造血幹細胞は、「前駆細胞」という新しい姿に変化します。
この造血幹細胞から前駆細胞への変化が起こるとき、造血幹細胞の万能性は失われ、将来どの免疫細胞となるかが決定します。
このため、前駆細胞は「B前駆細胞」や「顆粒球・マクロファージ前駆細胞」のように将来なる免疫細胞の名前を冠した名称で呼ばれます。
これらの前駆細胞がさらに分化すると、「コロニー形成細胞」を経て、単球や顆粒球となります。

細胞分化の略図

細胞分化の略図

では、造血幹細胞から前駆細胞に、または前駆細胞から各免疫細胞への分化は、どのようにして引き起こされるのでしょうか?

細胞を変化させる物質「サイトカイン」って?

サイトカイン

サイトカイン

サイトカインとは、細胞が分泌するタンパク質で、細胞どうしの情報交換や命令を伝えるなど様々な働きをしています。
例えば、免疫細胞が侵入した病原体と戦う際に、仲間の免疫細胞に援軍を頼むために放出したり(正確にはサイトカインの一種ケモカイン)、免疫細胞を活性化または抑制するために放出されるサイトカインもいます。
造血幹細胞から前駆細胞への変化、また前駆細胞から各免疫細胞への変化はサイトカインの一種である、「インターロイキン」の働きにより起こります。

胸腺の中で何が起きているか?

胸腺の図

胸腺

胸腺は心臓の上前部にある器官で思春期ごろに最も発達し、成人すると退化してその働きを終えます。
骨髄では、造血幹細胞に様々なサイトカインが作用することで、顆粒球や単球などが作られていました。
では、胸腺ではどのように免疫細胞が作られているのでしょうか?

胸腺で行われるのはT細胞の選別?

選別
胸腺で行われているのは、T細胞の選別(負の選択)です。
骨髄で作られたT前駆細胞は、胸腺に移動し、T細胞として働けるかのテストを受けます。
このテストに合格率は2%と低く、合格できなかったT細胞たちは、死んでしまいます。
このテストこそ「負の選択」と呼ばれるものです。
なぜT細胞はこのようなテストを受けなければならないのでしょうか?
この理由はT細胞の性質と関係しています。

T細胞の性質とは?

T細胞にはほかの細胞や、病原体を見分けられる「抗原レセプター」というセンサーがあり、このセンサーの種類は100億種以上にのぼります。
T細胞はこのセンサーで認識した物質に対してのみ攻撃をしかけます。
例えば、ある病原体が侵入してきた場合、この病原体を認識できるT細胞だけが戦って、認識できないT細胞は戦いません。
このようなT細胞の性質を抗原特異性と呼び、顆粒球や単球はこのような性質を持ちません。
T細胞はこの抗原特異性という性質を持つため胸腺でのテストを受ける必要があるのです。

テストが必要なのは自己寛容のため?

「自己寛容」とは細胞の宿主である自分や、食物に対して免疫反応を起こさないという仕組みで、この仕組みの誤作動がアレルギー反応です。
(アレルギー反応についてはこちら)
抗原レセプターに100億もの種類があれば、中には体の正常な細胞や外から入ってきた食物に反応してしまう抗原レセプターを持つT細胞もいます。
自己への攻撃性を持つT細胞がもしそのまま体内に入れば、自分の体を攻撃し始めてしまいます。
このようなことが起きないように,体を攻撃してしまうT細胞を殺すのが「負の選択」と呼ばれるもので、自己寛容のためにすべてのT細胞が受けなければならない、テストなのです。
ちなみに、この負の選択を乗り越えたT細胞はナイーブT細胞と呼ばれます。

免疫細胞はどこで働いているの?

リンパ系
骨髄や胸腺で作られた免疫細胞たちは、どこで働いているのでしょうか?
その答えは

  1. リンパ系
  2. 脾臓

ここからは、免疫細胞たちの働く場所についてお話しします。

免疫細胞の働く場所 1.リンパ系

免疫細胞の多くは体内のリンパ系の中に存在しています。
リンパ系とは手足の末端にある毛細リンパ管からいくつものリンパ節を通り、胸管または右リンパ本幹を経て首下方の静脈に開放するまでの循環器系で、脾臓を含むこともあります。
リンパ系は、体内に侵入した病原体が血管に侵入し、体循環する前に排除する働きをしています。
特に複数のリンパ管が出会う場所であるリンパ節では、免疫細胞の貪食(免疫細胞が病原体を食べること)やガン化細胞の破壊、さらに免疫細胞どうしのサイトカインによる情報交換や抗原提示も行われます。

用語解説 抗原提示
抗原提示とは、免疫細胞が貪食した病原体の情報を細胞表面に提示することで、他の免疫細胞との情報共有のために行われます。
抗原提示をする免疫細胞には、マクロファージや樹状細胞などがあり、抗原提示細胞と呼ばれます。

免疫細胞の働く場所 2.脾臓

脾臓
脾臓とは胃の後方にある臓器で、大きさは握りこぶしくらいです。
脾臓での免疫細胞の働きは主に抗体産生T細胞の活性化の2つです。

抗体産生とは?

抗体産生とは、免疫細胞の一種であるB細胞が病原体と戦うための武器である「抗体」を作ることです。
抗体は、病原体を働けなくさせたり、増殖を抑えることのできる物質で、一度体内にできると長期間その効力が残るという優れた武器です。
この抗体の働きを利用したのがワクチンです。詳しく知りたい方は、「ワクチンで抗体を作るってどういうこと?」の記事をお読みください。
このように脾臓はB細胞が働くための場所となってるのです。

T細胞の活性化とは?

T細胞の活性化とは負の選択をくぐり向けたナイーブT細胞が抗原レセプターで抗原を認知し、より強力なエフェクターT細胞になることです。
ナイーブT細胞はエフェクターT細胞になることで、B細胞に抗体産生の支持を出したり、ガン化細胞の破壊するといったT細胞の働きができるようになります。
このように、脾臓はT細胞最後の分化の場所となっているのです。

まとめ

まとめ
免疫細胞は骨髄や胸腺で作られ、リンパ系や脾臓で日々侵入する病原体と戦っています。
健康な時はあまり意識されない免疫ですが、この記事が免疫に感謝するきっかけになれば幸いです。

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